今月末からの山陰旅行の予習を兼ねて、現在、上野の東京国立博物館で開催中の出雲展に行きました。そのついでに、もう一つぜひ見ておきたかった展覧会があったので、まず、上野駅に行く前に渋谷駅に立ち寄り、広尾に向かいました。行き先は山種美術館で開催中の「竹内栖鳳-京都画壇の画家たち」展です。

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山種美術館

今年は竹内栖鳳(たけうちせいほう)の没後70年ということで、回顧展としては実に10年ぶりの開催なのだそうです。多くの美術館で栖鳳の絵を度々観てきたこともあり、10年ぶりというのはあまり実感がないのですが、栖鳳を中心に円山四条派の絵が一同に集まるということになると、これは見逃すわけには行きません。

実は今回、広尾の山種美術館は初めての訪問となります。以前、広尾に移転する前の日本橋にあった頃には、何度か訪れたことがあったのですが。平日の午前中にもかかわらず、予想以上に多くの人で賑わっていました。それだけ人気がある証拠なのですかね…。

栖鳳は、明治以降の京都画壇を牽引してきた中心人物であり、その門下から数多くの日本画家を輩出したことでも知られています。そうえいば展覧会場にあった解説文には、栖鳳のことを「京都画壇の総帥」とまで表現していました。全くの同感です。

今回の展覧会では、初めて見る作品が大半でしたが、その中でも栖鳳の代表作にして重要文化財の「斑猫(はんびょう)」をじっくりと鑑賞することができました。猫のふわふわとした毛の質感といい、瞳の青々とした色彩といい、絵から醸し出される雰囲気というのは、やはり現物を観るに限るな、とつくづく痛感しました。

ちなみに「斑猫」のモデルとなった猫、栖鳳が静岡の沼津を訪れた際に、八百屋で飼われていた猫を気に入り、自分の絵と交換して飼い主から譲り受けて京都に連れてきた、というエピソードが紹介されていました。沼津の隣町、三島に永いこと住んでいた私としては、思いがけず親近感を覚えてしまいました。港町に住んでいた猫、さぞかし新鮮で美味しい魚を食べていたことでしょう…。

今回の展覧会を見たあと、ふと、まだ独身だった十数年前、京都に一人旅に行った際、嵐山にある栖鳳の別荘跡に造られた竹内栖鳳記念館を訪れたことを思い出しました。確か、事前に電話予約しないと入館できない敷居の高い美術館で、実際に行ってみると、その施設の立派さに驚きました。私が訪問した時には(今日のような展覧会と違って)自分1人しか入場者がおらず、警備員の人から注がれる視線を常に背後に感じながら、館内を巡りました。美術館を出ると、手入れの行き届いた素晴らしい日本庭園と邸宅があり、そこでひと休みした記憶があります。

そんな栖鳳記念館、現在の様子はどうなっているのだろうと思い、帰宅後にネットで調べたところ衝撃の事実が…。何やら、美術館を所有していた企業が倒産した関係で、2003年、別会社に施設と栖鳳の作品が譲渡されたものの、以後、施設は非公開となってしまったそうです!もう10年以上前の話しのようですが、今の今まで不覚にも全く知りませんでした…。

そう考えると十数年前、栖鳳の作品を静かな空間の中、一人でじっくりと堪能できたことは幸運だったのかもしれません。

ちなみに当時の美術館は今、“天使の里”になっています。栖鳳は今、どんな気持ちなのでしょうか。

ボークス天使の里
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