泉屋博古館をあとにして次に向かったは、ホテルオークラ本館の敷地内にある大倉集古館、あまり知られていませんが日本最初の私設の美術館ですね。これまで何度も訪問したことがあるのですが、何と言ってもこの美術館、国の登録有形文化財に指定されており、建物自体も見所が一杯の美術館です。

大倉集古館
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今から20年以上前、大学4年生の時に初めて訪問したのですが、浦島太郎の物語に出てくる竜宮城のような一種異様な外観、そして時間が止まったかのような館内の張り詰めた空気感を、今でも鮮明に覚えています。私にとっては、かなり強烈な印象が残った建物でした。

その後、日本の近代建築の歴史を学んでいく中で、近代建築界の巨人「伊東忠太」が、この建物の設計者だということを知りました。洋風一辺倒の他の近代建築家とは異なり、世界を巡って各地の建築・文化を調査し、様々な国や地域の要素を融合して建物を設計した、オリジナリティに溢れた唯一無二の建築家です。

築地本願寺、靖国神社の遊就館、震災記念堂、明治神宮、京都の祇園閣、平安神宮など、現存する忠太の建物をこれまで色々と見て廻りましたが、その中でもこの大倉集古館は築地本願寺と並んで、彼の意匠の特徴が存分に表現された建物だと言えます。

そういえば昨年の冬、雑誌『東京人』12月号で「異形の建築家・伊東忠太」という特集記事が組まれ、書店で見つけて即買いしました。忠太の生前の活動や思想、現存する建築物の特徴などを改めて知る良い機会となりました。

伊東忠太はまた妖怪博士の異名を持つほど、鬼や妖怪といった異形の生き物に関心を持ったそうで、自ら設計した多くの建物の中に、空想上の動物や怪獣の彫像を配したことで知られます。彼の建築物を見学する時、建物の中にどんな彫刻が施されているかを探し出すのも、楽しみの1つです。

ちなみに私の中で妖怪博士というと、ゲゲゲの鬼太郎の作者の水木しげる先生、妖怪を体系的に研究した東洋大学の創設者の井上円了博士、そしてこの伊東忠太の三人が真っ先に思い浮かびます(井上円了については、機会を改めてまた記事にしたいと思っています…)。

館内の展示作品を鑑賞する前に、まずは建物の外観と周囲の庭を見学。
石積みの重厚な壁面、青緑色の銅板葺の屋根、朱色の門・窓・扉、亀甲型の窓など、やはり中国風のデザインが色濃く見える建物です。

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前庭の奥には、大倉集古館の創設者、大倉喜八郎がベンチに座る像が置かれています。写真を見てもわかるように、ベンチの片方が空いているので喜八郎翁と並んで座ることができます。

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美術館の裏庭にまわると、忠太の建築でおなじみの動物の彫像、亀と龍のかなり大きな銅像が置かれていてました。どちらも物凄い迫力で、「激突!ガメラ対キングギドラ」といった様相でした。ほかにも裏庭には、立派な石塔や石碑がズラリと並んでいました。

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建物をぐるりと一周していよいよ館内に入ろうとすると、力強い金剛力士像が来訪者に睨みをきかせています。

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今回、館内では「画の東西~近世近代絵画による美の競演・西から東から~」という企画展が開催中で、西は円山四条派、京都画壇の作品、東は江戸狩野派・横山大観を初めとする作品など、いずれも私の好みの流派・画家の作品がズラリと展示されていました。狩野派の屏風画や、横山大観の「瀟湘八景」など、これぞまさに“王道”といった感じの風格ある作品も見応えがあったのでが、なかでも特に印象に残ったのは、松花堂昭乗の「布袋各様図鑑」という作品です。

松花堂昭乗は江戸時代、書や画、茶道に通じた京都の文化人ですね。彼の描いた画をこれまで見る機会がなかったのですが、今回鑑賞した「布袋各様図鑑」は、布袋様の愛くるしい笑顔がとても印象的な、見る人の気持ちを和ませてくれる不思議な力を持つ作品でした。意識した訳ではなかったのですが、泉屋博古館で見た吉祥のモチーフと同様、布袋様は縁起物の代表的な存在ですね。

館内の展示作品をひと通り見終ったあと、2階のテラスの出ました。こちらも中国風の意匠が凝らされています。真正面にはホテルオークラの本館があります。

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大倉集古館は本当に、いつ訪れても見所満載の美術館です。まさに“都心の中に残る異形の空間”といった存在です。展覧会を鑑賞し終わったあと、ホテルの喫茶店で一服したかったのですが、冬のこの時期は日が暮れるのが早いため、後ろ髪をひかれながら次の目的地へと向かいました。
(続く)
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